フツリアイな相合い傘
そう思ったら急にドキドキしてきて、早く家に帰りたいのに、足がすくんでしまった。
後ろを振り返ったけど、近くを歩いている人は私のほかにいない。
私の家の方角は彼が座り込んでいる場所のさらにずっと先だから、そこを通らなければ帰れない。
あの人の横を通り過ぎていって、大丈夫だろうか。
いや、でも。この雨の中立ち往生も嫌だし。
勇気を出してあの人の横を通過するしかない。
私は覚悟を決めると、傘の柄を握る手に力を込めた。
そうして極力息をしないように、気配を消すように、急ぎ足で彼の横を通り抜ける。
でも、彼が何をしているのだろうという好奇心も全くないわけではなかった。
彼の横を完全に通り抜ける間際に、気付かれないようにそっと視線を投げてみる。