フツリアイな相合い傘
その瞬間、はっとした。
座り込む明るい茶髪の男の子の前にあったのは小さな段ボール箱。
そこにはまだ生まれてあまり日が経っていないであろう茶色の子猫がいて、段ボールの箱の淵に前足をかけて彼のことを見上げていた。
遠くからは不自然に開いて置かれているように見えた傘が、段ボールの中の子猫を雨から守るように翳されている。
その光景をつい立ち止まって見ていたら、明るい茶髪の男の子が私の気配に気づいて振り返った。
「あ……」
思わず声をあげたくなったのは彼も同じみたいだった。
次の瞬間ほぼ同時に、たぶん初めて、お互いの名前を呼び合ったと思う。
「西條さん」
「佐尾くん」
猫の入った段ボールの前に座り込んでいたのは、同じクラスの佐尾 悠飛(さお ゆうひ)だった。
ちなみに、彼とは中学校の同級生でもある。