フツリアイな相合い傘
それに引き換え私は、中学のときも今もあまり目立つほうじゃない。
もしかしたら、クラスメートの中には私のフルネームを把握してない人もいるかもしれない。
佐尾くんと私の間にはそれくらい格差がある。
だから、「名前、知ってたんだ?」と。
そう尋ねたいのは、むしろ私のほうなのだ。
目をぱちくりさせて私を見上げる佐尾くんは、いつからそうして猫の前に座っているのか、髪から肩から、とにかく全身が雨でびしょ濡れになっていた。
風邪をひかないだろうか……
危ない人かもしれないから気付かれないように通り過ぎたい。
そう思っていたはずなのに、濡れ鼠になっている佐尾くんを見ていたら、そのまま無視して去るわけにも行かなくなった。
初めて話したとはいえ、このまま放っていくのはさすがに冷酷すぎる気がする。
私は彼のほうに歩み寄ると、降り注ぐ雨から守るように彼の上に傘をさした。