フツリアイな相合い傘
「私はほっといてもらいたいのに……」
思わず零れた声は今にも泣き出しそうで。
授業中で静まり返った廊下に虚しく響いた。
「ほっとけるわけねぇだろ」
少し怒っているような佐尾くんの声が聞こえたかと思うと、強引に後ろを振り向かされる。
咄嗟のできごとに俯くのを忘れた私に、佐尾くんが苦しそうに笑いかけてきた。
「だって、西條さんだから」
いつも明るい笑顔ばかり見せている佐尾くんの、滅多に見ない表情に戸惑う。
それって……
困惑気味に眉を寄せる私に、佐尾くんが右手をすっと伸ばしてきた。
その手が頬を掠めるようにすり抜けて、頭の後ろに回る。
そのまま引き寄せられそうな気がして、驚いた私は思わずぎゅっと目を閉じた。
な、に……
佐尾くんの手が髪に触れるのがわかって、ビクリと肩を震わせる。