フツリアイな相合い傘
だけど、身を強張らせた私の身体は佐尾くんのほうに引き寄せられるなんてことはなく……
頭の後ろに触れた彼の手は私の髪を緩く引っ張るようにしながら下に落ちて、そのまま戻っていった。
「ごめん。馴れ馴れしいよな」
小さな声をたてて、佐尾くんが誤魔化すように笑う。
私からさりげなく視線を外した彼の顔は、笑っているはずなのになぜかとても切なげに見えた。
その表情が、私の胸に何度もチクリ、チクリと針で刺すような痛みを与える。
窓の外へとゆっくり向けられていく彼の視線を目で追いかける、自分の胸がひどく痛い。
その理由に、本当はもうどこかで気が付いていた。
気付くと佐尾くんのペースに巻き込まれて雨の日に傘に入れてしまうのも……
彼の私に対する優しさが、ショコラやチョコに対するそれと一緒かもしれないと気付いて傷付いたのも……
今、触れられそうになって思わず目を閉じたのも……