フツリアイな相合い傘


「それを面白がったクラスの子たち数人から傷のことをからかわれるようになって、私だけでなくお母さんもすごく気にするようになっていった。『どうしてもっとうまく庇えなかったんだろう。女の子なのに』って。『額は絶対に出しちゃダメ。お母さんのせいなのに、酷いこと言われるわ』って。そんなふうに言われるうちに、気付いたらうまく顔があげられなくなってた」

自嘲気味に口元を歪めながら、前髪の下に隠れる額の傷を手のひらで庇う。

もう痕しか残っていないというのに、前髪の上から触れると、まだ傷の痛みを覚えている手のひらが震える。

きつく、きつく前髪の上から額を押さえていると、そうしている方の手首を佐尾くんがそっとつかんだ。


「俺さ、西條さんのこと可愛いなーとか綺麗だなーって思うし、おでこの傷のこと知ってもその思いは全然変わらなかったよ?」

佐尾くんの言葉に驚きすぎて、手の震えが止まる。


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