フツリアイな相合い傘
「う、そだ……」
この人は、なんて残酷で適当なデタラメを口にするんだろう。
目を見開き、つかまれた手を解こうとすると、佐尾くんが慌てて私の手首を強い力で拘束する。
「嘘じゃないって。むしろ、小学生のときにからかってきた奴らの方がおかしいだろ。西條さんが顔あげた瞬間、いつも俺がどれだけドキッとさせられてるか知ってる?」
私の手首をつかんだままの佐尾くんがやけに真剣な眼差しを向けてくる。
ただ大きく目を瞠って戸惑うばかりの私に、佐尾くんがなおも続ける。
「俺が雨の日が好きなのは、西條さんが顔を上げて、一瞬でもちゃんと俺のことを見てくれるからだよ。ちょっと困った顔をして、それでもちゃんと目を合わせてくれる、その瞬間を独り占めにしたいって思う」
切なさを孕んだ、けれど強い佐尾くんの口調に圧倒されて声が出ない。
そんなの、嘘だ。
だって佐尾くんは、男女問わず好かれてて、彼のことが好きな女の子だってたくさんいる。