フツリアイな相合い傘
「とりあえず、今日も傘いれてもらっていい?」
にこりと笑いながら、佐尾くんが持っていた私のスクールバッグ差し出してくる。
私はそれを受け取ると、無言でコクリと頷いた。
スクールバッグから折り畳み傘を取り出して開くと、隣に並ぶ佐尾くんが雨に濡れないように雨空に向かって腕を高く伸ばして翳す。
遠慮がちに見上げたら、佐尾くんがとても優しい目をして私のことを見ていた。
その眼差しが、さっきの彼の言葉を鮮明に思い出させる。
きっと、気持ちを伝えるのにタイミングというのはとても大事で……
佐尾くんの目を見つめ返しながら、そのタイミングは今なんだと思った。
今を逃したら、私はきっと佐尾くんにうまく気持ちを伝えられなくなる。
そう思ったら、傘を持つのとは反対の手が、佐尾くんの腕をぎゅっとつかんでいた。