フツリアイな相合い傘
「あの、ね……」
緊張で急激に口が渇く。
佐尾くんの腕をつかむ手に、必要以上の力がこもる。
「私、最近は雨の日が前ほど嫌いじゃない」
ボソリとつぶやいた私を見下ろして、佐尾くんが少し考え込むように眉根を寄せる。
「それは、こんなふうに佐尾くんが話しかけてくれるからで……私は佐尾くんが……」
眉根の緊張を解いた佐尾くんに、勢いよく抱きしめられて折りたたみ傘が手から落ちる。
好き。
その言葉は私と佐尾くんふたりだけの耳に届いて、雨の音とともに消えていった。