フツリアイな相合い傘




「西條さん」

雨の降る放課後。

昇降口に立って雨空を見上げながらため息をついていると、後ろから肩を叩かれた。

振り向くと、そこには思ったとおり佐尾くんの笑顔があって、思わず顔が綻ぶ。


「途中までいれて。傘、忘れちゃった」

いつものごとく、そんなセリフを吐いて私の隣に並ぶ彼に呆れた目で見つめる。


「今日、午後から雨予報出てたのに?佐尾くん、そもそも雨の日に傘持ってくる気がないでしょ」

「そんなことないよ。天気予報見てこなかっただけ」

不満気にそう言いながらも、結局は傘を開いて佐尾くんの上に翳してしまう。

そんな私を見下ろして、彼が悪戯っぽくと笑った。

傘を高く掲げる私に寄り添うように並んだ佐尾くんが、ハンドルを握る私の手の甲にそっと手のひらを重ねる。

冷たい外気に晒されていた手が優しい温もりに包まれて、ドクンと胸が揺れた。



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