フツリアイな相合い傘
◇
「西條さん」
雨の降る放課後。
昇降口に立って雨空を見上げながらため息をついていると、後ろから肩を叩かれた。
振り向くと、そこには思ったとおり佐尾くんの笑顔があって、思わず顔が綻ぶ。
「途中までいれて。傘、忘れちゃった」
いつものごとく、そんなセリフを吐いて私の隣に並ぶ彼に呆れた目で見つめる。
「今日、午後から雨予報出てたのに?佐尾くん、そもそも雨の日に傘持ってくる気がないでしょ」
「そんなことないよ。天気予報見てこなかっただけ」
不満気にそう言いながらも、結局は傘を開いて佐尾くんの上に翳してしまう。
そんな私を見下ろして、彼が悪戯っぽくと笑った。
傘を高く掲げる私に寄り添うように並んだ佐尾くんが、ハンドルを握る私の手の甲にそっと手のひらを重ねる。
冷たい外気に晒されていた手が優しい温もりに包まれて、ドクンと胸が揺れた。