フツリアイな相合い傘


佐尾くんの手のひらの下でハンドルを握る手にぎゅっと力を込めたとき、不意に彼の唇が遠慮がちに唇の端に落ちてきた。

その瞬間身体中の力が抜けて、傘のハンドルを握る手の力も緩む。

私たちの上でグラリと揺れた折りたたみ傘を、私の手の上から佐尾くんが支え直してくれる。

そうしてさりげなく傘の傾きを変えたかと思うと、軽く口の端に触れていただけだった佐尾くんの唇が、私のそれを覆うように重なった。

そっと優しく触れてくる佐尾くんのキスに、だんだん雨の音も聞こえなくなる。

聞こえてくるのはドキドキと鳴る心臓の音と、佐尾くんの少し浅い息遣い。

折りたたみ傘の下。

雨の音も、肌に絡みつくような湿度も、全て意識の底に遠のいていく。



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