フツリアイな相合い傘
そばにいた西條さんが、俺を気にしながらほんの少しそばを離れる。
不自然な距離をとる彼女を気にかけながら、なんとなく嫌な予感がした。
そういえば、ふたりのうちの中3のときに同じクラスだったほう。こいつの名前は富谷って言って。
俺らのクラスの前を西條さんとその友達が通るたびに、「あの黒髪の子、結構可愛い」って騒いでた。
そもそも、俺が高校2年になって、西條さんの名前と彼女が同じ中学だってことを認識できていたきっかけは富谷だったりする。
西條さんは、正直言って中学時代もそんなに目立つ子じゃなかった。
だけど、中3のときは友達と付き添いみたいな感じで俺らの教室に来ていることがよくあった。
富谷があんまり騒ぐから、西條さんが教室で友達を待っているときに、俺もさりげなく彼女を見てみたりしていた。
その当時は別に西條さんに特別な感情を抱いたりはしなかったけど、長く伸ばした綺麗な黒髪からときおりのぞき見える横顔は、確かに可愛いなとは少し思っていた。