フツリアイな相合い傘
結局、富谷は騒いでるだけで西條さんに特別なアプローチはしてなかったし、卒業する頃には後輩の子に告られて付き合っていた。
だから、今さら西條さんを見てどうこうってこともないだろうし。
告られて他の子と付き合ったくらいだから、そもそもそんなに執着だってなかったはず。
そう思ったのに、無意識のうちに俺の防衛本能が働いていた。
気付くと、富谷から見えづらいように西條さんのことを背中の後ろに隠してしまっていて。
俺のその不自然な動きが富谷たちを不審感を与えたらしい。
「あれ?もしかして、後ろにいるのって佐尾の彼女?」
そう訊いてきたのは元部活仲間。
富谷のほうは面白半分に笑いながら俺の後ろに回り込む。
そうして「あ!」と驚嘆の声をあげた。
「もしかして、西條さん?」
中学を卒業してもう1年も経ってるし、気付かないかもしれない。
そんな期待もなくはなかったけど、富谷は俺の背後にいる西條さんにちゃんと気付いた。