フツリアイな相合い傘
「俺、同じ中学だった富谷。覚えてる?」
ハイテンションで馴れ馴れしく話しかける富谷に、西條さんは困ったような顔で小さく頷いた。
覚えてるんだ。
その事実に、なんだか複雑な気持ちになる。
「西條さん。なんで佐尾と一緒にいんの?知り合いだったっけ?」
「あ、えっと……同じ高校で、同じクラスで……」
富谷が食い付くように立て続けに西條さんに話しかける。
富谷の態度にも、控えめだけどポツポツと富谷の質問に答えている西條さんにもイラついた。
「そうなんだ。なんで教えてくれなかったんだよ、佐尾」
苛立ちを隠しきれずに、無言で顔をしかめていると、富谷が俺の肩を軽く叩いた。
「なんでいちいちお前に教えないといけないんだよ」
つい、いつもより低い声が出て、そんな自分に驚く。
中学生活3年間の付き合いで俺のことを知ってるバスケ部の友達も、俺の声に驚いたように目を瞬いていた。