フツリアイな相合い傘


だけど、西條さんを前に舞い上がっているらしい富谷はいつもと違う俺の様子には気付かない。


「だって、俺も西條さんと仲良くなりてーもん。俺、中学のときからずっと、西條さんのこと可愛いなーと思ってたんだよね」

富谷が笑顔を振りまきながら、告白紛いなことを言い始める。


「いや、お前。彼女は?」

「そんなの、もう1年以上前に別れてるって。西條さん、よかったら連絡先とか訊いていい?」

あっけらかんと笑って、ジーパンのポケットからスマホを取り出そうとするから、俺も本当に気が気じゃなくなってきた。


「俺ら、これから用事あるから」

完全に困惑顔の西條さんの手を慌ててつかむと、富谷が驚いたように瞬きをした。


「何?佐尾と西條さん、マジに付き合ってんの?」

「だったら、何?」

「いや。これまでの女の趣味と全然違うじゃん」

富谷の言葉に思わず舌打ちしたくなる。

余計なこと言いやがって。


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