フツリアイな相合い傘
富谷の言葉を西條さんがどう受け止めただろうか。
それを考えたら、手を繋ぐ彼女の顔をすぐに見ることができなかった。
「とにかく、俺らはもう行くから」
その場にいるのに耐えられなくて、西條さんの手だけはつかんだまま富谷たちに背を向ける。
ハンバーガー屋を出ると、俺は西條さんを振り返ることもせずに、彼女の手をグイグイと引っ張って歩いた。
しばらく歩き続けたところで、西條さんが繋いだ手を遠慮がちに後ろに引いた。
「あ、あの。佐尾くん。駅、通り過ぎちゃったよ?」
困惑気味に俺を見上げる彼女を見てハッとする。
ハンバーガーを食べたあとは電車に乗って出かけるつもりだったのに、気付けば俺は待ち合わせをした公園の近くまで西條さんのことを引っ張ってきてしまっていた。
「あぁ、ごめん……」
頭を掻きながら謝ると、西條さんが首を横に振ってはにかむように笑った。