フツリアイな相合い傘
「いいよ。遠くに出かけるのはまた今度で」
「でも……」
「ここまで戻ってきたなら、公園のベンチで座らない?私、これ作ってきた」
西條さんがそう言って、肩からかけていたトートバッグの中から小さな紙袋を取り出す。
手渡されたそれを見ると、中には綺麗にラッピングされたクッキーが入っていた。
そういえば、いつか作ってと頼んだことがある。
学校には持っていけないからと渋られてたけど、今日持ってきてくれたんだ。
「ありがとう。すげー嬉しい」
笑いかけると、西條さんが前髪の上から額を押さえながら、恥ずかしそうに目を伏せた。
「あの、なんか。ごめんね……」
いい匂いのする紙袋を覗き込んでいると、西條さんが前髪を押さえたまま、肩を竦めて小さく笑った。
自嘲気味にも見えるその笑い方に、少し不安になる。