フツリアイな相合い傘


問いかけておきながら、西條さんからの明確な答えなんて初めから求めてなかった。


「もっと触れたい、抱きしめたい、キスしたい。ほんとにもう、そんなことばっか」

いつも伏し目がちで遠慮がちな西條さんを前に、できるだけ押し込めてきた欲望にも似た感情を一気に吐き出す。

そうしたら俺自身はすっきりしたけど、西條さんは白目でも剥きそうな勢いでピタリと固まっていた。

しばらく待ってみたけど、固まったままの西條さんはなかなか反応を示さない。


「ごめん、引いた?」

「いや、あの……」

こっちから声をかけたら、ようやく視線が左右に揺れて、すぐに戸惑い気味に俯いてしまった。

よく見たら、綺麗な黒髪から覗く耳の先が発火しそうなくらいに赤くなっている。

引かれたわけではないのか。

俯いてしまった西條さんの頬にそっと手を添えたら、そこも発火しそうなくらいに熱い。


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