フツリアイな相合い傘
頬に手のひらを添えたまま、親指だけを顎に這わせて軽く持ち上げる。
そうしたら、案外素直に西條さんが顔を上げてくれた。
俺の言葉を、少しは本気で受け止めてくれたのかな。
真っ赤に染まった頬で、困ったように俺を見上げる西條さんはどうしようもなく可愛い。
「つりあわないとか、それ誰基準の話?西條さん、可愛いよ。俺史上最高可愛い」
我慢できなくなってぎゅっと抱きしめたら、西條さんが腕の中で緊張気味に少し震えた。
「佐尾くん、変。私にそんなこと言うひと、佐尾くんくらいだよ」
そう言って、西條さんが俺の腕の中から顔を覗かせる。
俺を見上げてクスリと笑う西條さんの表情は、とても綺麗だった。
「今日が雨だったらよかったのに……」
思わずつぶやくと、西條さんが困惑気味に眉を寄せた。
だって雨だったら、傘の下で俺だけが、彼女のどんな表情も独り占めにできる。