フツリアイな相合い傘


西條さんを抱きしめながら、自分の独占欲の強さにはじめて気が付いた。


「俺、西條さんのことだいぶ好きなんだけど」

抱きしめる腕に力を込めたら、西條さんが遠慮がちに俺の背に両腕を回した。

そうして、やっぱり遠慮がちに俺の服だけをつまんでぎゅっと握る。


「私も、佐尾くんが大好きだよ」

ちょっと語尾をあげて、確かめるように囁かれた彼女の言葉に、胸の奥が熱くなる。


「キスしていい?」

「え?」

西條さんのを抱きしめたまま耳元で訊ねると、彼女の肩が驚いたように小さく揺れた。

返事を待つつもりも、そんな余裕もなかった。

抱きしめていた腕を解くと、西條さんの頬を掬い上げる。

唇を合わせる間際、一瞬俺を見てそれから目を伏せた西條さんの表情はとても綺麗で。

俺だけがずっと、彼女のことを見ていられたらいいのにと思う。

西條さんの唇に触れながら、もう一度思った。

今日が雨だったらよかったのに……



《Fin》

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