フツリアイな相合い傘
「途中まで同じ方向だから」
「そうだよな。ありがとう、すげー助かる」
佐尾くんがそのことを知らないだろうという前提でそう言ったのに、はっきりと肯定されたから驚いた。
その後、私たちはふたりでひとつの傘に入って、子猫を拾った段ボール箱の前の空き地まで引き返した。
だけど、段ボールを庇うように置かれていたはずの佐尾くんの傘は、どういうわけかそこから姿を消していた。
風に飛ばされたのか、誰かに持って行かれたのか。
そこには、ただの空き箱になってしまった、ボロボロの段ボールしか残されていなかった。
「西條さん。悪いけど、ついでにもうちょっと先まで入れてもらっていい?」
ここまで来て「ノー」と言えるはずもなかった。
小さく頷くと、またふたりで傘に入って歩き出す。