フツリアイな相合い傘
佐尾くんとは、子猫を動物病院に預けた帰りに連絡先を交換した。
子猫の飼い主のことで連絡をとることがあるかもしれなかったからだ。
だけど子猫のことは学校で少し話をすれば十分に事足りたから、結局、私からも佐尾くんからも互いの携帯に直接連絡しあうことは一度もなかった。
従兄弟が子猫を飼うことに決まってからは、なおさら連絡しあう必要もなくなった。
だから、交換しあった連絡先は、互いのスマホの中にただ無意味に存在している。
佐尾くんがさっき言っていた子猫の写真だって、私はきっと送らないと思う。
成人している一人暮らしの従兄弟に次にいつ会うかなんて全くわからないし、そのときには佐尾くんの興味はあの子から失せてしまっているかもしれない。