フツリアイな相合い傘

「私は佐尾くんの友達なんかじゃ――……」

小さく反論すると、ついさっきまで満面の笑みを浮かべていた佐尾くんが急にしょんぼりと項垂れるから、慌てて口を噤む。


「俺と西條さん、同じクラスじゃん？それだけじゃなくて同中だし、帰る方向も同じだし、最近はたまにこうやって話すし。だけど、友達だと思ってたの、俺だけだったんだ？」

「あ、あの……」

「すげー悲しい。じゃー、またね」

佐尾くんが本当に悲しげな声でそう言って、項垂れたまま雨の中へと足を踏み出そうとする。

昇降口の屋根から身体半分はみ出た佐尾くんの髪や制服を、降りつける雨が容赦なく濡らす。

制服の肩や背中にでき始めた雨のシミを見つめながら、私は結局立ち去ろうとする彼に声をかけていた。


「ちょっと待って」