フツリアイな相合い傘
タオルで髪を拭く私と、それを見ている佐尾くんの間に気まずい沈黙が流れる。
「タオル、やっぱり洗濯して返すね」
髪も拭き終えて顔をあげると、さっきは私の言葉を否定した佐尾くんが小さく首を縦に振った。
「あ、私の傘……」
佐尾くんの手元にある傘に視線を向けながら、そっと指差す。
私に言われてはっとしたように手元を見た佐尾くんは、ついこの瞬間までその存在を忘れていたらしい。
私のほうにそれを差し出しながら、気まずい空気を振り払うように明るく笑ってくれた。
その笑顔にほっとして、ほんの少し微笑み返しながら差し出された傘に手を伸ばす。
指先が傘の手元に触れたとき、佐尾くんが私の顔を見ながらおもむろに口を開いた。
「西條さんの髪、綺麗だね」
その言葉に、一瞬手の動きが止まる。
視線をあげて瞬きしたら、佐尾くんが驚くほど綺麗に微笑んだ。