フツリアイな相合い傘


「綺麗なストレートの黒髪だなぁって」

正面からそんなふうに髪のことを褒められたことなんてなかったから、反応に困る。

自然と耳が熱くなるのがわかり、心臓がざわついた。


「そんなことは……佐尾くんみたいに明るくするのも、ちょっといいなぁとは思う。中学のとき黒かったから、雰囲気が全然変わるよね」

他人から褒められることに慣れていない私は、ドキドキしながらなんとか自分のことから話題を逸らそうと必死だった。

俯きがちに佐尾くんに話を振ると、ふっと一瞬彼を包む空気が変わる。

ドキッとして視線をあげると、佐尾くんが大きく目を見開いていて。

私と視線が交わると、ぱっと嬉しそうに破顔した。


「西條さん、知ってたんだ?中学のときの俺のこと」

佐尾くんがやけに明るい声を出すから、今度はそのことに戸惑ってしまう。



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