フツリアイな相合い傘

佐尾くんがこれ以上濡れないように折りたたみ傘を高く持ち上げて、彼の上に挿す。


「今日限りだから」

そのまま私も遠慮がちに傘に入って見上げると、振り向いた彼が嬉しそうに笑った。


「ありがとう、西條さん」

キラキラした彼の笑顔を見た瞬間、騙されたと思った。

急いで目を逸らして下を向くと、胸のあたりまで伸ばしたストレートの黒髪が私の横顔を佐尾くんの視線から守ってくれる。


「俺が持つよ、傘」

少し高い場所から佐尾くんの声がして、折りたたみ傘を握る私の手に彼の手が重なりかける。


「いい」

びっくりして、拒絶するように勢いよく傘を引き寄せると、宙に浮いたままの佐尾くんの手を雨が濡らし始めた。


「ごめん……」

「ありがとう」

慌てて傘を戻すと、佐尾くんの明るい声が返ってくる。