フツリアイな相合い傘
どうしてもっと早く思い付かなかったんだろう。
そのことに気がついたら、一刻も早くスクールバッグに入れたままの重荷を下ろしてしまいたくなった。
昇降口の端っこでスクールバッグを下ろすと、適当なノートの端を小さな長方形に破く。
ありがとうございました。
しゃがんだ膝の上でなるべく丁寧に字を書くと、タオルを入れた紙袋にノートの切れ端を添える。
それから、下駄箱の周りにあまり人がいないタイミングを見計らって、それを佐尾くんの靴箱へと手早く突っ込んだ。
私よりあとに学校を出る佐尾くんが、きっと気付いて引き取ってくれるだろう。
これでようやく気がかりがなくなった。
「あれ、西條さん?」
けれどほっと息を吐いたのも束の間、背後から呼び止められてドキリとする。
振り向くとそこには佐尾くんがいて、彼の靴箱の前から不自然な動きで立ち去ろうとしている私を不思議そうな目でジッと見ていた。