フツリアイな相合い傘


「今、俺の靴箱に何か入れた?」

「あ、え、っと……」


別に悪いことをしたわけじゃない。

ただ、借り物のタオルを直接返せなくて靴箱に突っ込んだ。

それだけのことなのだけど、佐尾くん本人にその現場を目撃されていたのだと思ったら妙に気まずかった。

そのまま立ち去ることもできずに挙動不審な態度をとっていたら、佐尾くんが笑顔で靴箱のほうに近付いてくる。


「西條さん、俺の靴箱に何入れたの?ラブレターだったらどうしよう」

そんな訳のわからない冗談を言いながら靴箱に手を突っ込んだ佐尾くんは、つい今しがた私が書いたメモと洗濯済みのタオルが入った紙袋に気付くとほんの一瞬無表情になった。


垣間見えた佐尾くんの無の横顔が、私を不安にさせる。


あれ。私、何か間違ったことをした……?

不安な面持ちで見つめていたら、佐尾くんが私のほうを見て明るくにこっと笑った。



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