フツリアイな相合い傘
まだ何か?
振り向いて見ると、佐尾くんが何かを躊躇するように僅かに視線を横にずらす。
呼び止められた理由を考えつつ大きくひとつ瞬きしたら、佐尾くんが遠慮がちに口を開いた。
「あの、さ、西條さん。よかったら、一緒に帰らない?」
「え?」
びっくりして目も口もぽかんと開いたら、佐尾くんが慌てて取り繕うように言葉を続けた。
「あ、 他の人と約束してたら無理にとまでは言わないんだけど」
「約束、とかは特に……」
高校生になってから、特定の誰かと一緒に帰宅することなんてなかった。
雨の日に佐尾くんに呼び止められて、半ば強制的に一緒に帰るハメになるとき以外は。
だけど今日は……
雨がやんで清々しいくらいに晴れた空を見遣る。
「今日、雨降ってないよ?」
佐尾くんに、私の傘は不要なはずだ。