フツリアイな相合い傘
小さく首を捻っていると、佐尾くんがほんの少し眉間を寄せて、なんだか難しそうな表情を浮かべた。
「タイミングよく出会ったから声かけてみたんだけど。雨が降ってない日は誘ったらダメ?」
問い返されて、答えに困った。
そうか。佐尾くんはただ軽く誘ってくれただけなんだよね。
こんなシチュエーションは初めてで、どうするのが正解なのかわからない。
というより、佐尾くんのほうこそ、私なんかより他にもっと一緒に帰る相手がいるんじゃないかな。
「佐尾くんは他に一緒に帰る人いないの?」
反応を窺いながらそっと訊ねると、佐尾くんが歯を覗かせながらやたらと嬉しそうに笑った。
「いないから西條さんに声かけたんだけど」
「う、ん?」
佐尾くんはそれでいいのかな。
雨の日ならともかく、こんな晴れた日に私と並んで帰ったって彼には何のメリットもないのに。