フツリアイな相合い傘


いや、申し訳がらなくても、誰も私なんかが佐尾くんと一緒に帰っているとは考えもつかないか。

目立たない女がひとり、佐尾くんの近くを歩いてるなーくらいに思われてるか、もしくは私の姿なんて彼らの視界にすら入ってないかもしれない。

佐尾くんの後ろをうつむいて歩きながら自嘲の笑みを浮かべていると、校門を出たところで彼が私を振り返った。


「どうしてさっきから俺の後ろ歩いてんの?」

「な、なんとなく……」

ぼそりと答えると、佐尾くんが不満気に顔をしかめた。


「もうちょっと前おいでよ。じゃないとしゃべりにくい」

「あ、うん」

しゃべるって、何を……?

そんなことを思いながら、遠慮がちに一歩佐尾くんに近付く。

それでも、まだ私と彼の間には不自然な距離があった。


「もうちょっと」

「え。あ、はい」

手招きされてさらに半歩前に出ると、やっぱり不服そうな顔の佐尾くんに再度手招きされる。


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