フツリアイな相合い傘
結局、私が傘を挿したまま。
私たちはふたりで小さな傘に入って、雨の中を歩き始めた。
折りたたみ傘は、雨から高校生ふたりを守るにはちょっと狭い。
自然と寄り合わなければならないのと、隣を歩くのが佐尾くんだってことに、緊張で肩が凝る。
歩調を合わせて歩くのだって気を使うから、道路に跳ね返った雨で普段よりも足が濡れる。
佐尾くんの明るい茶色の髪は目立つから、傘の向こう側から感じる他の生徒たちの視線が痛い。
うつむいて顔を下に向けたまま、視線だけをちらりとあげて、髪の隙間から隣の佐尾くんの横顔を盗み見る。
私にとって今の状況は気が重いだけなのに、佐尾くんは目線を高く上げて鼻唄でも歌いだしそうなほど機嫌の良さそうな顔をして、私の隣を軽やかに歩いていた。
こんな雨の日に、何がそんなに楽しいんだろう。
気づかれないように小さくため息をつく。