フツリアイな相合い傘
下を向いてこっそり笑っていると、佐尾くんが今度は興味深そうに訊ねてくる。
「じゃぁ、西條さんは料理うまいんだ?」
「特別うまくはないよ。クッキーやケーキを焦がさず焼ける程度だし」
「へぇ。俺にしてみたら、クッキーやケーキを焼けるってことがまずすごいけど」
本当に大したことなんてしてなかったのに、佐尾くんがやたらと褒めてくれるから少し気恥ずかしい。
「私は運動部には向いてなかったから。私なんかより、佐尾くんのほうずっとすごかったでしょ?」
「いや、俺は別に……」
「でも、スタメンだったんだよね?」
私が訊ねると、佐尾くんが驚いたように目を見開いて、それから恥ずかしそうに顔を逸らした。
「一応は。ていうか、よく知ってるね、西條さん」
小さな声でつぶやく佐尾くんの頬が、ほんのり火照っているように見える。