フツリアイな相合い傘
別れ道の真ん中で、足を止めた佐尾くんが、同時に話すのもやめる。
晴れた日に誰かと一緒に学校から帰るのはとてもひさしぶりのことだった。
佐尾くんの話はとても楽しかったから、もっと聞いていたいような気もするけれど……
ここでさよなら、かな。
「じゃぁ、また」
そう言って手を振ろうとしたら、佐尾くんが小さく首を横に振った。
「西條さんち、向こうだよね?送ってく」
「え、でも……」
そんなことをしたら、佐尾くんが遠回りになる。
断ろうと口を開きかけたら、それに気付いた佐尾くんが先に声を出した。
「あ、ちょっと待って。今断ろうとしてるでしょ?」
「うん。だって、佐尾くんが遠回りになるし」
「大丈夫だよ」
「でも……」
断りの文句を続けようとしたら、佐尾くんが私の唇にすっと人差し指をあてた。
ひんやりとした彼の指先の温度にドキリとする。