フツリアイな相合い傘
咄嗟に身を引こうとしたら、佐尾くんがじっと私の目を覗き込むように見てきたから、金縛りにでもあったような感覚に襲われて退けなくなった。
「俺がもうちょっと西條さんと歩きたい気分なんだよ。今日は雨じゃないし、傘の心配もいらない。送ってくのに、何か不都合でもある?」
「……」
黙り込んでいたら、佐尾くんが問いかけへの答えを催促するように首を横に傾げる。
「不都合、ある?」
「な、い……と思います」
ほとんど押し切られるようなかたちでそう返したら、佐尾くんがひどく嬉しそうに笑うから思わずドキリとした。
「じゃぁ、行こっか」
明るい声でそう言って私を促す佐尾くんの笑顔に、訳もなく動揺する。
妙な胸騒ぎを沈めたくて、私は何度も前髪の上から強く額を押さえつけていた。