フツリアイな相合い傘
◇
「こっちにずっとまっすぐ」
分かれ道を曲がってすぐ、自宅の方向を指しながらそう言ったきり、私と佐尾くんは何も言わずにただ歩いた。
さっきまで中学時代のバスケ部の仲間のことを饒舌に話していた佐尾くんが、急に何も話さなくなったから、隣を歩く私の緊張感が増す。
もうちょっと私と歩きたいと言ってくれた佐尾くんだったけど、こんな沈黙の中で歩いてて楽しいのかな。
かと言って、私から佐尾くんにどんな話題を振ればいいのかもわからない。
遠回りをしたことを後悔してるんじゃないかな。
気になって仕方なくて、横目で佐尾くんを見たら、彼は前を向いて涼しい顔をして歩いていた。
そのまま見ていると、私の視線に気付いた佐尾くんが、唇の端をきゅっと引き上げて笑いかけてくる。
気まずさに、カッと顔を熱くして目をそらした私に、佐尾くんは何も言わなかった。