フツリアイな相合い傘
5分ほど歩くと、連なる戸建ての住宅の陰に、白壁の3階建てのアパートが見えてくる。
そこが私の家だった。
「もう、そこだから……」
遠目に見えてきた自宅を指差しながら足を止める。
そのとき、私たちが立ち止まった前の家から威嚇するような犬の鳴き声が聞こえてきた。
見ると、その家で飼われている柴犬が、庭の柵の隙間から鼻先を突き出すようにしながら低く唸っていた。
「ここ、お前ん家の前なのにごめんな。知らないやつが長いこと立ち止まってたら怒ってたりまえだよな」
佐尾くんがそう言って笑いながら、庭の柵の方へ歩み寄って行く。
そんな彼に、犬はますます警戒して低く唸った。
「その子、捨てられて保健所にいたのを、ここの家の人がもらってきたらしいんだけど、そのせいもあってものすごく警戒心が強いの。ここのお家の人以外には懐かなくて、毎日顔を見る近所の人のことも警戒して威嚇してる」
下手に刺激しないほうがいい。