フツリアイな相合い傘


いつも目をつりあげて唸っているチョコしか知らない私は、佐尾くんを見つめるチョコの困ったような表情に驚いた。


「少し撫でていい?お前、ふわふわで綺麗だなー」

そう言いながら、佐尾くんがついに柵の隙間から手を入れる。

それはさすがに……と慌てて身を乗り出しかけたけど、チョコがそっと背中に伸ばされた佐尾くんの手を無言で受け入れたから、そのことにさらに驚いた。

目を見開いて、さらにはぽっかりと口まで開けている私をよそに、佐尾くんが優しい声でまた何かチョコに話しかける。


最初は難しい顔でじっと耐えるように硬直していたチョコだったけど、そのうち佐尾くんに気を許したのか、その目を気怠そうに少し細めた。

チョコがこの家の人たち以外に触らせているところなんて初めて見る。


「すごいね、手なづけちゃった……」

呆然とした声でつぶやくと、佐尾くんが笑った。



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