フツリアイな相合い傘

チョコの反応に驚いた私の手が、行き場を失って宙を彷徨う。

チョコはそんな私を冷たい目で一瞥すると、すっと立ち上がって庭の奥へと駆けて行った。

茶色の尾を振りながら、庭の木陰に作られた小屋に駆けていくチョコを見つめて息を吐く。


「行っちゃった。やっぱり、佐尾くんだから触らせてくれたんだよ」

「ただの気分じゃない？」

少し落胆しながら柵の隙間から手を引き抜く私に、佐尾くんが慰めの言葉をくれる。


「きっと佐尾くんは、動物受けがいいんだよ」

「何それ」

「ショコラだって、たまに会っても私には素っ気ない」

「ショコラ？」

不思議そうに首を傾げた佐尾くんを見て、そういえばあの子の名前を彼に伝えたことはなかったと気が付いた。


「話してなかったね。佐尾くんが助けた子猫の名前。従兄弟がつけたの」