フツリアイな相合い傘
「へぇ。あいつの名前、ショコラになったんだ?チョコレートみたいに濃い茶色の毛だったもんな」
私の言葉に、佐尾くんが嬉しそうに笑う。
ショコラの顔を思い浮かべているのか、ちょっと上を見上げながら嬉しそうに頬を緩める佐尾くんの表情はとても優しい。
その横顔に、胸が小さくざわめいた。
佐尾くんの黄色味の強い茶髪が、西に傾き始めた太陽の光でキラキラと照らされるのを見つめながら目を細める。
「きっと、ショコラもチョコも感じ取ったんだろうね。佐尾くんが優しいひとだって」
ふと、心に浮かんだことを思いのままに口にすると、佐尾くんがこっちを振り向いた。
「そういえば、こんな話聞いたことある。佐尾くん、中学のときに無断で学校休んだことあるんでしょ?次の日も遅刻して登校してきたと思ったら目が赤くなってて。理由を聞いたら、『小さい頃から飼ってた金魚が死んじゃった』んだって……」