フツリアイな相合い傘
中3のとき、佐尾くんのことが好きだった友人から聞いた話。
中学生になって金魚の死にショックを受けて学校を休んだ佐尾くんのことを、多くのクラスメートの男子が笑ったそうだ。
だけど、当時佐尾くんと同じクラスだった彼女は、このエピソードをきっかけに彼が好きになったらしい。
同じように、これをきっかけに佐尾くんのことが可愛いって騒いでた女子たちもいたみたい。
頬を染めた友人からそのことを聞いたとき、私はとても微笑ましく思った。
今思い出してもそう思う。
だけど私の話を聞いた佐尾くんは、なぜか耳まで真っ赤になっていた。
「どうして西條さんがその話知ってるの?」
「知り合いに聞いたから」
「そんな昔の恥ずかしい話が広まってるんだ……」
小さく呻くようにそう言いながら、佐尾くんが顔を覆う。
その姿を見ていたら、自然と笑みがこぼれた。