フツリアイな相合い傘
「何、笑ってんだよ」
私を横目に見ながら、佐尾くんがふて腐れた声でつぶやく。
男の子にこんなこと思ったらきっと嫌がられるんだろうけど……
その反応が可愛くて、私はますます笑ってしまった。
「どうして?その話聞いたとき、佐尾くんて優しいひとなんだなって思ったよ」
「西條さんが聞いた話が、9割方ほんとだから恥ずかしいんだって」
「そうかな」
「そーだよ!」
ちょっと不機嫌な声を出す佐尾くんのことを、またクスクス笑っていたら、彼が深いため息を吐いた。
「夜店の金魚ってさ、弱っててすぐ死んじゃうことが多いだろ?でも、俺が4歳くらいのときに金魚すくいでとったそいつは10年くらい生きたんだよ。だから、俺にとってはただの金魚じゃなかったの!っていうのが一応言い訳」