フツリアイな相合い傘




「だって佐尾くん、友達多いでしょ。それに、女子にも人気だし。そういう人の話は、私なんかの耳にも自然に入ってくるものなんだよ」

自分の口から出たその説明が妙にしっくりときて、ひとりで何度も頷く。

だけど佐尾くんは、なんだか納得のいかない顔をしていた。


チョコの家の前を離れて歩いていた私たちは、白い壁の3階建てのアパートの前でどちらともなく足を止める。

自宅の前に辿り着いた私が別れの言葉を告げようとすると、それより先に佐尾くんが口を開いた。


「なんかさ、すげー不公平じゃない?」

「え?」

佐尾くんが唐突にそんなことを言うから、さっぱり訳がわからなかった。

ぽかんと口を開けた私を、難しそうに眉根を寄せた佐尾くんがじっと見てくる。


「やっぱり、不公平だ」

「何が?」

もう一度同じような言葉を繰り返した佐尾くんに、困惑気味に問いかける。




< 86 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop