フツリアイな相合い傘


「西條さんが、一方的に俺のことをいろいろ知ってるってこと。予想以上に知っててくれて嬉しいって思う反面、俺は西條さんのことほとんど知らねーじゃんってちょっと虚しくなる」

佐尾くんが不服そうにそう零す。

だけど、私には彼がそんなことを言う理由が全くわからなかった。


佐尾くんが私のことを知らないなんて、そんなの当然だ。

だって、彼と私ではそもそも学校内における立ち位置が違うんだから。


「そうかな。私のこと知ったって何の得にもならないでしょ?」

パチパチと目を瞬いていると、佐尾くんがなんだか複雑そうな表情を浮かべた。


「損得の話ではないんだけど……」


それなら何だ、と考えながら首を傾げたら、佐尾くんが笑いながら小さく肩を竦めた。


「いいや、今日は。まだ不公平感は否めないけど、ここまで一緒に帰れたし」

「う、ん?」


< 87 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop