フツリアイな相合い傘


瑞穂ちゃんと別れてしばらく歩くと、佐尾くんの住むマンションが近づいてくる。

今度は足を止めたりしないように、意識的に早足でマンションの前を通り過ぎる。


「あれ?西條さん?」

マンションのエントランス前を通過し終えたとき、背後から呼ぶ声がして心臓がドクンと大きく跳ね上がった。

足音が近づいてくるのを感じてゆっくりと振り返ると、そこには笑顔の佐尾くんがいた。


「買い物?」

佐尾くんが、私の手からぶら下がるコンビニ袋に視線を投げる。


「うん、お使い頼まれて……」

「そうなんだ。俺も今からコンビニ行くところ」

「そっか。いってらっしゃい」

そう答えながら頭に思い浮かべたのは、瑞穂ちゃんの顔だった。

私と入れ違いでコンビニに入った瑞穂ちゃんは、まだ中にいるだろうか。


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