ふたつのハート
「ところでさぁ」


「…ん?…」


山代くんがまた私の全身をチェックし始めた。


「その靴にソックス、どうしちゃったわけ?」


ん?…自分の足下をよく見たら…

ドロ水が染み込んで真っ黒になっている。

時間がなくて、夢中だったから気がつかなかったけれど…

…さっきの河原で…

ワンちゃんと遊んでいてなんて言ったら、
恥ずかしいし…


「もしかして、セイカと同じ、くるま?」


「…くるまと…ケンカ…」

「…ケンカ?…」

不思議そうな表情で私を見る山代くん

?…ん…私へんなことを言った?


「スゲー!ななせって最強じゃん!」


失敗…

ケンカは余計だった…ハハハ……

さっきの話につられて、つい口走ってしまった。


「…じつは…」


本当のことを言おうとした時だった、山代くんはニコニコしながら私に向かって


「ななせって、意外とかわいいじゃん…」


「……」


初めて、かわいいって言われた…


山代くんは、機能停止状態の私から、離れようとしなかった。




学校のひとつ前の駅で、私たちの前のドアが開く。


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