ふたつのハート
「行ってきま~す!」

昨日の雨がウソのように、今日の澄みきった青空を見ると心も弾む。

ヒヤシンスの甘い香りが漂い、心地よい気持ちにさせてくれる道を、ゆっくりと通り過ぎる。

しばらくして、あの橋の見える場所までくると、私は立ち止まった。


昨日の景色とは変わり、瓦れきやいろんな物が河川敷に落ちていた。

あの橋桁を見たけれど、もちろんワンちゃんはいない。

はっ!…ふと思った。

もし、河川敷にワンちゃんがいたら…そう思ったらゾッとした、!?…あの橋桁!…そっか、知ってて…あの場所へ?

でも、ワンちゃんが自分でいける訳ないし…

不思議

でも…

…元気にしてるかなぁ

ワンちゃん…

チビ…

私はピンクの宝石をにぎりしめながら、チビの無事を願った。


きっと今頃はこの青空の下、どこか別の場所で散歩でもしてるよ、だってあの飼い主さん優しそうだったもん。


「いけない!今日は遅刻できないもんね、紗世と約束したし、早く行かなくちゃ…」


もう一度振り返り橋桁を見た後、私は駅に向かった。




改札を抜けホームへ歩いて行くと、列の最後尾に見覚えのある2人の姿があった。


うっ…

何故か怯む私の両脚


山代くんとセイカくん…
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