ふたつのハート
山代くんが私に気づいて、手を振ってくれている。

私も右手を小さくヒョコっと上げたけれど、またすぐに下ろした。


「お~い、ちびちゃん、おはよ!」

またまた大きな声で挨拶するから、みんな振り向いてる。

恥ずかしい…

ちょっとは私の身にもなってよ、と言いたい。

早歩きで近づき、チラッと、山代くんを見ながら私も

「おはよ…」

それに比べて隣のセイカくんは相変わらず
無関心

一応セイカくんにも、ぜんぜん顔見えてないけれど…

言ってみた

小さいから視界に入ってないのだろうか?

「おは よう」

って言ったけれど、あまりにも身長が高いから聞こえてないのだろうか?

もともと声も小さいから、たぶん聞こえてないのかな

…はは…

ひとり、心の中でウケていた私…


すると…


「おはよ…」

…声が…


山代くんもその声に気づいたのか、真顔でセイカくんを見上げる。

「セイカ?…おまえ、今なにか言った?」

「べつに…」

「だよな、女子に挨拶すんのみたことないし、俺の聞き間違いかな…」

私には、確かに、おはようって、聞こえたけれど…

ゆっくり見上げるとセイカくんの口もとが…



少しだけほほえみの形に見えた。

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