ふたつのハート
「行っちゃった…」

紗世はまだ見ている


「お~い、さよ? いったいどうしたの?」

紗世はピクッとして我に戻った。


「ちびってすごい!」


「わたしのどこが?」


「たしかに…」


「なによ!しつれいなッ!」


「ごめんごめん…ストレートに聞くけれど、どうやって仲良くなれたの?」

「…別に、なにもしてないけど」

「うそ、教えてよ」


「あ、待って、時間なくなっちゃうから、歩きながらはなそ」


私達は学生の例の中へととけ込んだ。


「で、彼、どんな感じだったの?」


「山代くんのことかな?彼、チャラっぽいけどほんとはすっごくいい人で、セイカくんも無口かなぁって思ってたけれど、おしゃべりで面白い感じだったよ…」


「あの高吉くんが、うそ!」


すると、後ろを歩いていた女子生徒が突然、話に割り込んできた。


「あの.今高吉くんがって、言ってたよね?
なに?どうしたの?教えて!」

一緒にいた子も話に入ってきて

「あ、それ!あたしも聞きたい!ねえどうしたの?」

紗世の表情がだんだん引きつってきた。

ピンチの場面になるといつもこう…

よく見たら相手は二年生の人達だった…

「あ、え~とですね、その…高吉くんはやっぱり、いつ見てもカッコいいなぁって…
です」

紗世?…それにこの人達も、セイカくんのことを…そう思っているのか…

私…はっきり言って、セイカくんのこと、まともに見たことないから…

恥ずかしくて見れないのが現実、というか顔の位置が高すぎて見えないからっていうのもあるけど

こんなに人気があるとは知らなかった。

「あなた、なにあたりまえのこと言ってんの、でも、いいよねーあの、無口でクールなところも…」

「はい、おっしゃる通りで…」

タジタジになっている紗世…


< 28 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop