ふたつのハート
教室へ入ると、彼の姿を探した。


今までなら、彼の存在すらあやふやで、彼を目で追いかけた事なんてなかったのに…


「いた」

ちょうどいいタイミングで、セイカくんはひとりで席に着いていた。


しかし…なんだろう、この雰囲気…


「ちび?」

さよは、私の机の横に来て、小さな声で私に囁きかける。

「わかる?この威圧感…
女子のほとんどが高吉くんのことを気にしてる。だから、高吉くんの周辺で何かあれば、注目の的になるわけよ…」


「注目の…まと…」

「そう、速攻マークされちゃうの」

「そ、そしたらさ、さっきの手紙なんて渡したら、どうなっちゃうわけ?」


一瞬黙ってしまう紗世、私の目を見つめながら、小さく頷いた。


「鈍感なちびでもわかるよね…そうなっちゃうわけよ」


「え?…よくわかんないけど…
とにかく大騒ぎになっちゃうよね」


「うん…でも、その前に高吉くん
100パーセント拒否すると思うけどね」

「そっか…」
セイカくんて女の人が嫌いだから…

目立つのは嫌だけれど、約束はちゃんと守らないと…

「ねえさよ?これ、いつ渡そうか?」


「高吉くんがひとりになった時か…最低でも、女子がいない時、気をつけてね」


「りょうかい!」





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